マンガタリライターじょにすけです。
今回は長編物語「火の鳥」シリーズ第7話をお届けします。
※そもそも「火の鳥」ってどんな漫画?という方はこちらからどうぞ
第7作『羽衣(はごろも)編』を一言で表すなら、SF舞台劇マンガです。
「火の鳥」はどの編もクセがすごいんですけど、、その中でも『羽衣編』はクセが過激です。いろんな意味で。笑
クセが強すぎて、、
つくられた当時は社会を騒がせた問題作であり…
今まで観たことのない視点や味わったことのない感覚を味わえる漫画でもあります。
きっと、好きな人は好きでたまらない!そんな作品なんじゃないでしょうか。笑
今回は『羽衣編』が、、
- なんで社会問題を巻き起こしたのか?
- こんなん初めて!を味わえる理由?
- どんなストーリーなのか?
をざっくりご紹介した後に、、『羽衣編』で気づかされた“大事なことをいろんな演出方法でしつこく伝えること”の重要性について語っていこうと思います。
どうぞお楽しみください。
目次
1.『羽衣編』基本情報
掲載誌 | COM |
---|---|
連載期間 | 1971年10月 |
時代設定 | 9〜10世紀(?)乱世編の約80年前 |
まずはおさらいです。『羽衣編』の特徴やあらすじを簡単にご紹介していきますねー。
・70年代に放射能問題を斬って世間を騒がせた社会派漫画 !?
『羽衣編』は連載当時、「放射能の影響で奇形児が生まれる」という表現が過激すぎる。ということで問題になりました。
70年代と言えば、戦後20〜30年。僕の生まれる前の話なんですけど、手塚先生の影響力や被爆者の気持ちを考えると社会問題になるのもわかる気がします。。
手塚先生は、もともと過激な表現が多い方で(笑)、他の作品でもたびたび改訂されているシーンがあります。ただ、今作はセリフが全面的に書き直され、単行本化されたのは連載された9年後の1980年のことでした。
ということで本来は、次の『望郷編』に繋がるストーリーだったようですが、上記の理由から『羽衣編』は1話読み切りの短編物語になっています。
によると、いずれは別の『羽衣編』を新たに書き起こす構想があったみたいですね。残念ながら実現はされていません。。
・この作品でしか観られない舞台劇視点マンガ !?
『羽衣編』が唯一無二である理由。最大の特徴は、やはりなんといっても、舞台劇を観客目線で観ているようなアングルで描かれている、というところです。
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
なにこれ!?
手塚先生!なんでこんなことしようと思ったんですか!?
文字にして表すと、自然と(?)はてなマーク(!)びっくりマークが次々と出てきちゃう。そんな漫画です。
漫画の神の思いつき(?)、はたまた天才科学者の漫画×舞台劇を組み合わせるという実験(?)によってつくられた本作は、まさに唯一無二!笑
この作品でしか観られない視点、不思議な感覚を味わえます。
まだ読んだことがない人はぜひ味わってみてください。
ページ数は43Pとめちゃめちゃ短くて、一気に読めるので、、
最近、マンネリぎみ。。刺激が欲しいなー。ちょっと気分転換したいなー。
なんていうときにはもってこいですね。
ちなみに、、
ストーリーは、日本各地に存在している「羽衣伝説」をモチーフにつくられいてます。
あらすじ 〜未来から舞い降りた天女と漁師の悲劇〜
舞台の幕が開き、物語も幕を開けます。
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
舞台の中の舞台は遠州三保の浜(えんしゅうみほのはま)。そこへ羽衣をまとった美しい女おとき登場…
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
おときが羽衣を松にかけ水浴びをしていると、漁師のズクがやってきて…
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
ズクは、おときの羽衣を自分のモノにしてしまいます。
「返して」「返さない」の一悶着の後、ズクは「どうしても聞きたいことがある」とおときに質問します…
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
おときの話を聞いたズクは、おときのことを天女だと思い込みます。そして、羽衣を返しておときの身を自由にすることを条件に3年間一緒に暮らしてほしいと頼みました。おときはそれを了承します。
ズクとおときは3年間、夫婦として共に暮らすことに。。
…
3年後。
ズクとおときの間には子供も誕生していて、幸せな夫婦生活を送っています。
そこへ2人の侍が現れ、兵としてズクを連れていこうとしました。
おときは、羽衣を侍に渡し、徴兵を見逃してもらい、ズクを助けます…
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
その後おときは、ズクにすべてを打ち明けます。
自分が未来からやってきたこと。その時代にはまだない羽衣を残すことで繊維の歴史が変わってしまい、重い罪にとわれることを。
それを聞いたズクは羽衣を取り返すために侍のあとを追っていきます。
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
…
ズクは羽衣を取り返すことができるのか?
2人にはどんな結末が待ち受けているのか?という展開でクライマックスへ進んでいきます。
2. 読んだ人たちの感想
他の読者さんの感想も紹介させていただきますね。
火の鳥羽衣編の新しい手法を試してみた感すきなんだけどわかります?
— 5万円失くした (@_chiku_wa_) December 21, 2017
火の鳥は羽衣編の実験作っぷりが好きですね
— たまいぬ (@tama_straydog) February 4, 2018
火の鳥羽衣編は能なんだな。定点漫画ってあんまり読んだことなかったから新鮮。
— ぼち'22 (@ibot_18) July 16, 2016
手塚治虫作品だと火の鳥羽衣編が好き
SFなのか浄瑠璃なのかよくわからなくなってくる展開と、最後のイラストの静かな迫力が好き— ユズリハ (@yuzuriha_f) December 4, 2017
火の鳥羽衣編とか絶対何人か性癖突き刺さると思うから読んで(突き刺さった人)
— tella@俺化垢 (@kkrg01nhn) September 26, 2017
あと火の鳥の羽衣編?人形劇っぽいやつ、あれ終わり方にぞわっとした覚えがある。ううん読み直したい
— てつ子 (@tetsuko_839010) February 9, 2017
『羽衣編』と言えばやはり、特徴的な視点、怖すぎる結末ですね。
3.『羽衣編』が気づかせてくれる“大事なことをいろんな切り口からしつこく伝えること”の重要性
ここまでは『羽衣編』がどんな漫画なのか?をご紹介しました。
ここからは『羽衣編』で手塚先生が教えてくれた“信念をいろんな角度から何度も伝えることの重要性”について語っていきたいと思います。
3-1. “大事なことはしつこく伝える”ぐらいがちょうどいい
『羽衣編』のテーマは、ザ・反戦!
戦争に振り回されるおときとズクの悲劇を描くことによって、僕たちに“戦争の悲惨さ”を伝えてくれました。
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
この連載シリーズでも何回かご紹介させていただきましたが、、手塚先生は、自身が戦争を体験したので、その体験、戦争の悲惨さを、漫画を通して後世に伝えたい。という想いを持っていた人です。
手塚治虫と戦争
※こちらでは、手塚先生の戦争体験談と戦争に対する想い・考えが肉声で聞けるので、よかったら聞いてみてください。
ここまでの「火の鳥」でも、、
- 『黎明編』…壮絶な死を遂げるナギや猿田彦
- 『未来編』…核戦争による人類滅亡。などなど
数々の戦争が描かれてきました。
手塚先生は僕たちに、何度も戦争の恐ろしさを訴えかけてきます。
しつこいほどに。笑
でも、確かに、、戦争がないこと、平和なことが当たり前の日本で生きていると、戦争について考える機会なんてないんですよね。
現実には今なお戦争をしている国、今にも戦争が起きそうな国があります。今後、日本が戦争をする確率はかなり低いとは思うんですけど、、当たり前のように感じている平和が当たり前ではなくなる可能性は0ではありません。
そして、、
- 平和なことが当たり前
- 生きていることが当たり前
- 一緒にいて、なにかをやってもらうことが当たり前
人は、当たり前になったときに、目の前にある大事なこと、それに対する感謝の気持ちを忘れます。僕もよく見失いがちです。苦笑
だからこそ、大事なことはしつこく伝えるぐらいがちょうどいいんだと思います。
ただ、、同じことをしつこく言われるのって、正直うざいですよね?
同じ話を何度もされたら、またその話?うるさいなー。って、話を聞かなくなるのが普通だと思います。
でも、「火の鳥」を読んでていて、また戦争の話か?しつこいなー。とは感じませんでした。
なんで、しつこいと感じなかったのか?
これがわかれば、相手にしつこいと感じさせずに、大事なメッセージを伝えることができそうですね。
3-2. しつこい主張も切り口が面白ければ素直に入ってくる。
『羽衣編』では手塚先生の伝えたいメッセージ「戦争の悲惨さ」を、舞台劇と漫画を組み合わせた今まで観たことのない新しい形で僕たちに見せてくれました。
「火の鳥 羽衣編」角川ハードカバー版より
斬新でしたね。
気づいたらストーリーに惹き込まれていて、、ゾクッとする衝撃的なラストを迎えて、、戦争って、やっぱ恐いな。と素直に感じました。
同じメッセージでも切り口が新しければ、新鮮な気持ちで最後まで聞いちゃうし、スッと受け入れられるんです。
思えば、ここまで描かれてきた戦争も…
- 過去の戦争、未来の戦争
- 戦争に参加している人の物語、戦争に振り回される人の物語
- 世界を俯瞰してみる戦争、1人ひとりの人間に焦点を当ててみる戦争
すべて切り口が違っていました。
だから、同じ戦争の話でも感じ方はぜんぜん違ったんです。
大事なメッセージは、相手が飽きないように、できれば楽しみながら最後まで話を聞いてもらえるように、演出を工夫しながら伝えていくことが重要なんですね。
また、“いろんな角度から伝える”ということにはもう1つの大きな価値があると思います。
3-3. しつこい主張は、揺るがない信念に。
戦争についていろんな角度から語られたことで、どこからどう見ても戦争は悲惨だ。という感じで説得力は増し、理解も深まりました。
その結果、手塚先生は、同じ主張をしつこくしてくるうざい人ではなく、、
- 反戦という揺るぎない信念をもった人
- 貴重な体験を通して気づいた大事なことをブレずに伝え続けてくれる人
- 一本筋の通った信用できる人
として多くの人に認められ、多くのファンに愛されているんだと思います。
僕も「火の鳥」『羽衣編』を通して、手塚先生の揺るがない信念と、それを伝えるための多角的な視点、面白い演出に触れて、ますます手塚治虫という人間のことが好きになりました。笑
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は『羽衣編』を読んで気づかされた「信念をいろんな演出方法で何度も伝える」ということの重要性について語らせていただきました。
僕たちも、時に先輩として、時に親として、自分が体験して気づいた大事なことを、後輩や子供に伝えなきゃいけない場面があると思います。
そのときは、相手が理解できるまで、演出を工夫して何度も伝えていきましょう。
しつこいおじさんにならないように。笑
次回は『望郷(ぼうきょう)編』
宇宙のある惑星で、1人の女が自分の子供たちと結ばれ、子孫を増やしていく。という、これまた衝撃的なお話です。
お楽しみに〜!
じょにすけ
↓未読の方、久しぶりに読み返したくなった方は、漫画アプリ「マンガワン」で無料で読めるので、よかったらぜひ! ※現在は掲載されていません(2022年8月19日追記)
↓ご購入はこちらから。紙版新品・中古・電子書籍から選べます。
【「火の鳥」連載シリーズ】
第1話:【まとめ】火の鳥『黎明編』読んだ人の感想と見どころ3選を紹介
第2話:壮大すぎる火の鳥『未来編』を何度も読み返して辿り着いた1つの答え
第3話:歴史ラブロマンス 火の鳥『ヤマト編』に学ぶ幸せな死に方
第4話:誰一人報われない物語 火の鳥『宇宙編』の中で輝く手塚治虫の遊び心
第5話:火の鳥『鳳凰編』で学ぶ!心を動かすストーリーを作る3つのコツ
第6話:火の鳥『復活編』に観る人間の蘇生&ロボットと共存する明るい未来とは?
第7話:火の鳥『羽衣編』で気づく「信念をいろんな演出方法でしつこく伝えることの重要性」←イマココ
第8話:火の鳥『望郷編』は混迷した思考がクリアになる漫画だ!
第9話:火の鳥『乱世編』から、新しい環境に焦らないで適応して自分の居場所を確立する方法を学ぼう
第10話:火の鳥『生命編』の此処に注目!生き方を考えさせられる青居の一生
次の記事はこちら↓
コメントを残す